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ツル首へ

ツル首予備軍の包丁修理が来たので、写真を撮ってみました。

2011-7-27-2.jpg

切っ先アール部分(赤矢印)部分から先は砥石で一度も研がれていません!
このまま研ぎ続けると、刃元からの直線ラインが研げて、切っ先が研ぎ残り
自動的にツル首になってしまいます。

2011-7-27-1.jpg

既に、研ぎ過ぎたせいで、切っ先アールの刃が千切れています。


ツル首になっても、更に研ぎ込むと、サバキ東型のように先尖りの包丁になります。
そうなったら、砥石にペタっと当たってベタ研ぎの完成!
この頃なると、切刃幅も狭くなってある意味強靱な刃になっていると思います。

先尖りの出刃が好きな方も居られるので、切っ先アールを研げなければ失格だ!!!
っと言う事では無いのですが、アールを維持したいと考えているけど、結果そうなる
と言う方は、意識的に研ぐ必要が出てきます。

出刃は特に切っ先アールが強いので、しっかり肘を上げて研ぎに掛からないと
アールを維持出来ません!

個人的な見解ですが、出刃の刃を強くて抜け良くしようと思うとハマグリを駆使しなけ
ればならないと考えています。 切刃が狭くなると、出刃の厚みから鈍角になるので、
開く力が増して抜けが悪くなってしまう(切れ味が落ちた印象を受ける)

抜けを良くしようと思い、身卸のように切れ刃を広げると刃は弱くなってしまう。

刃先からシノギ筋までの切刃幅をある程度広く保って、刃肉を持たせる方法(ハマグリ)
が、出刃包丁にとって最良なのでは?と思うのです。

毎日研ぐので、そんなハマグリなんか付けてられるか~~!ってのが本当の所かも
知れませんが、厚みや切刃幅、包丁鋼材の中でバランスを見つければ、シノギ筋から
研ぎ抜く必要は少なくなるように思っています。(ハマグリ部分はさほど触らないでOK!)


話しが飛びましたが、特に出刃は平面の研ぎではなく立体の研ぎを思って研がれると、
切っ先アールの維持や、ハマグリ、を得る事が出来ると思います。 特に切っ先は球体
の一片を研ぐようなイメージで!←オーバーな表現ですけど。。。

追記:
切っ先アールを必要としない場合、「鳥出刃」なんかがオススメです!
そういう風に裏の比とシノギがついているので、使い良く研ぎ易いかも知れません!

硬度を感じる

ちょいと、会社PCの具合が悪く更新しておりませんでした(^^;
明日、復旧の予定です!

さて今日は、INOX本焼柳刃類の裏押し+糸引刃付けを行いました。
ざっと30本ぐらい続けて研ぎましたが、1本だけ硬めの包丁を見つけました。
”こんなの初めて!”

連続で研いだから解ったぐらいの硬度差です。

INOX本焼はHRC61設定で、研ぎ易さを考慮した硬度設定ですが、この1本は
61.5?~62ぐらいの印象を受けました。

最近の砥石は研削力もアップしているので、ちょっと硬度アップしてもいいかな?
っとも一瞬思いましたが、その後で同じINOX鎌形薄刃を本刃付けしたら、
やっぱり61ぐらいが適正だと体感しました(^^;

さて、この硬いINOXは切れるのか!! っと思う方が居られるかと思いますが、
印象的に切れる感じがするだけで、抜きに出て鋭い訳でもなく、当たりが敏感な
感じがするだけでした(><)b これで、圧倒的な鋭さが出たら硬度UP確定でした!



酔心INOX本焼和包丁のコストパフォーマンスについて!

270㎜柳刃の場合、上代40,000円です。 
糸引(ミラクルエッジ)を駆使した場合10年以上持ちます。
しかも、中砥で研ぐ回数が極めて少ないので、形状が変わりませんから、
ずっと、好みの形状を維持できる!
錆びに強いので、メンテナンスも楽で衛生的でもある!

単純に10年=3650日 40,000円÷3650日=10.95円/1日
お寿司屋さんだと途中で柄の交換が必要かも知れません!!

結構研いでしまう方でも、7年~8年は使われてますので、15円/1日です。

そう考えると、安いですよね・・・。

INOX-3SET-BANA-S.jpg
お近くに販売店が無い場合は、こちらからご購入できます!
初回INOX本焼購入の方には、INOX専用仕上砥石をプレゼント中です。
”白鋼みたいな掛かる刃が付きます!”

職人と上田屋へ


刃研ぎ職人さんと上田屋へ行きました。


鍛冶屋と調理師の接点は極めて少ないのですが、刃研ぎと調理師の接点は大きい。
どんな感じになるのかと、、ワクワクしながら職人と上田師範の話に耳を傾けました。


職人さんからは、庖丁を研いでいる観点からの調理師さんへの要望?理想論などを
聞いていたので、上田さんと話しが合う?(庖丁に対する思いが合致する!)だろう
と思っていましたが、やはりその通りで、「ちゃんと考えてる板前さんが居るんや!」
っと自分が目指している事への確信を得たように見えました。

職人「お前には解らんやろうな~この話し!」っと弄られつつ話しは流れていきました。


刃研職人が目指している理想の庖丁とは? そんな話しに行き着いた所で質問が!

職人「俺が研いでる庖丁のドコがいいと思う?」
達哉「シノギ筋が立ち易いし裏押しも綺麗に当たるし!」
職人「お前はそんだけしか解ってないんか。。。」っと寂しそうに且つ勉強不足を指摘。

もちろん答えは聞けないし教えてくれない。

それ以外に何かあるのか??  鋭く切れるような鋼にするのは鍛冶屋の仕事、それを
切れる刃物に研ぎ上げるのが刃研屋の仕事、加えるならば、シノギを立て易く裏の比も
綺麗に出す。 それ以外になんかあるのか??


もちろん、この職人さんが研いだ庖丁を本刃付けした事もある。
確かに研ぎ易いし、砥石への当たりも良い。 他に何が???


当日は深夜までワイワイして、日付が変わった頃に職人を家に送り届け、帰り道に
ずっと「なんやろ?」っと考えながら、帰宅。


翌日の夕方に時間が出来たので、もう一度その職人さんが研いだ庖丁を本刃付けしてみた。
何気なく砥石に当ててみて、切っ先カーブに差し掛かった時。。。「ん??なんやこれ?」


切っ先カーブが勝手に研げる事に気が付く。
もちろん、肘を上げて切っ先カーブを砥石に当てに行くわけだが、当たり方が違う。

「もう、そこしか無い」

って所に、バシっと当たる。 いやいや、当たってしまう状況。

よっぽど意地悪な気持ちで砥がないとツル首には出来ない感じすらする。
昔、矯正箸なる物があったが、そんな感じがする庖丁。
砥がなければならない所を教えてくれる感じ。


2011-7-7-1.jpg

この事か??? この日は金曜日、週明けに職人さんの納品があるので、
一か八かその時に答え合わせをしてみよう!



答えは正解!



そこから、そのカラクリについてもっと深く教えて貰いました。

これは、刃研ぎ屋さんしか出来ない技術で、調理師さんが自分で刃の構造を構築する事は
出来ません。 基礎から研ぎ上げる事で研ぐ場所へ導き、形の崩れにくい庖丁となる。

これまでの庖丁研ぎ論を一気に覆すかも知れません。


ツル首に研ぎ上げたい人には、この研ぎを加えた庖丁は向きませんが、新品の形状を維持
したまま研ぎ込んで自分の物にしたい方には、目からウロコの庖丁だと思うのです。


解析すると凄い技術が加えられた庖丁ですが、何気なく研いでると解りにくい。
でも、時間が経った時に何か違うぞ? 大げさに言うと、「研ぎが上手くなったかも!」っと
思ってしまうかも知れません。

2011-7-7-2.jpg


解ってもらえるのか? 解ってもらえないのか? でも調理師さんが研いだ時、形が崩れない研ぎ易い
庖丁に淡々と研ぎ上げる技術と心意気に少し震えました。


どんなに良い鍛冶屋が打った包丁でも、良い研ぎ師が研いだ包丁でも、最終的に切れる刃を出すのは
調理師さんであって、刃物屋サイドではどうする事も出来ない。 でも、そういった工夫は包丁屋の手
を離れてからも、見えないアフターサービスとして継続されるのだと思ったのでした。

プロフィール

TATSUYA AOKI

Author:TATSUYA AOKI
大阪堺の包丁屋で働き、試行錯誤を繰り返す男です。

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